ビッグデータはその名のとおり膨大なデータを意味しますが、そのデータをいかに分析して企業が効果的に活用するかが注目されています。 本記事ではビッグデータを分析する際に整えておくべきこと、具体的な分析法、分析や活用時に成功させるポイントを詳しく紹介します。 さらに、ビッグデータを活用した成功事例や、おすすめの企業・ツールも紹介しているので、自社に蓄積しているデータの分析を効率化したい方や、経営戦略策定のためにより高度な分析をしてもらいたい方はぜひ参考にしてみてください。 Tカードのビッグデータでできることとは?マーケティング施策一覧をダウンロード

そもそも「ビッグデータ」は「ただのデータ」とは違うことを理解する

ビッグデータとは数値やテキスト情報など、普段、Excelなどに落とし込んで比較できるデータだけでなく、画像や音声、動画などの「規則性」を見出すことが困難なデータを含めます。単に量だけでなく、データの種類や形も含め、膨大なデータの総称といえるでしょう。

そもそも「ビッグデータ」は「ただのデータ」とは違うことを理解するビジネスで使われている主なビッグデータビッグデータ分析を行いビジネスに成果をもたらした事例事例1. ECサイトの情報をもとにしたセグメント配信で商品購入率が2.5倍に【株式会社資生堂】事例2. 生産物の顧客評価を収集し、養殖家の売上を120%アップ【株式会社ビビッドガーデン】事例3. データ分析により、営業方針決定を迅速化【株式会社グッデイ】ビッグデータ分析のために準備するべき2つのこと1.データを収集し、蓄積するデータの質を高めるために、クレンジングを行うビッグデータを分析するための手法6つクロス集計:さまざまな属性別の分析ができる回帰分析:結果に対する要因を把握できるアソシエーション分析:隠れた法則をみつけだす決定木分析:複数の要因と結果の関係性から強い要因を把握できるクラスター分析:似たもの同士をグループに分け分析する主成分分析:多種類のデータの要約ができるビッグデータ分析や活用を成功させる3つのポイント1.ビッグデータ分析は何度も重ね深く洞察することが大切2.分析方法だけではなくビッグデータの整備や保管方法も注目3.ビッグデータを活用するにはマネジメント層の理解が必要ビッグデータを分析するには主に2つのアプローチがあるビッグデータの分析ができる企業4選ビッグデータ分析や活用を円滑にするBIツール4選まとめ【広告代理店必見】広告データを自動で集計し分析を促進するツール

これらのデータを分析することにより、いままで気づけなかった消費者行動の心理に気づけたり、注力すべき商品を特定して売上を向上させることできるようになります。(参考:15社のビッグデータ活用事例から学ぶ、成果につながる活用の方法)。 ビッグデータを分析できれば、未来予測や異常の察知などの分析範囲がこれまでのデータから導きだせる結果と比べ格段に広く、正確になるでしょう。 参考:ビッグデータとは?メリットや活用事例、注意点、活用までの流れ

ビジネスで使われている主なビッグデータ

ビッグデータは分析目的や分析する人の立場によって定義が変わります。今回はビジネス目的で見た場合、ビッグデータとは何を指すのかもう少し具体的に見てみましょう。 主に下記2種類のデータを集めて活用することが多いようです。

顧客データ

顧客の購買・行動データなど、自社で集めやすい情報が多いです。また、競合の販売価格や店舗情報、キャンペーン、検索結果の表示順位など、Web上で集められる情報も対象にできます。 これらのデータから分析し、売上のアップための戦略意思決定が行えます。

財務データ

売上、収益、費用、利益など、主に財務部門が管理しているデータです。企業価値を高めるためのファイナンス戦略やコストカットの意思決定が行えます。 世界的な大手信用調査会社BvD社のデータベース「Osiris」が保有する、全世界8万社以上・30年間の財務ビッグデータを活用した研究も進んでいます。 参考:財務ビッグデータの可視化と統計モデリング|関西学院大学

ビッグデータ分析を行いビジネスに成果をもたらした事例

ビッグデータを活用すれば、経営戦略のスムーズな決定が可能です。また、活用次第では、自社の業務効率を高めてコストを削減したり、広告配信の効果を高めることもでき、実際に売上を伸ばしている企業もあります。 例えば、資生堂ではECサイトで収集した顧客情報とサイト内のアクセスログなどを分析することで、広告をより細かいセグメントで配信できるようになりました。サイトの5周年記念には、広告の成果で購入率を約2.5倍にしています。 株式会社ビビッドガーデンでは、自社が運営するオンラインサイトを介した農産物の販売にBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを用いたビッグデータ分析を導入しています。顧客による評価をもとに、時期によって生産量を調整できるようになった結果、月の売上が前年比120%となった生産者もいました。 また、ホームセンターを運営する株式会社グッディの場合は、社内データとオープンデータやGoogleのデータを組み合わせた分析を実施し、イレギュラーな状況でも経営判断を早急に行える仕組みをつくっています。 このように、ビッグデータの分析が企業の力となるケースは少なくありません。ここからは、3社のビッグデータ分析の事例をそれぞれ詳しく紹介していきます。 参考:【2021年版】BIツール厳選31選を徹底比較!絶対失敗しない選び方のポイントまで解説

事例1. ECサイトの情報をもとにしたセグメント配信で商品購入率が2.5倍に【株式会社資生堂】

株式会社資生堂では、自社サイト「ワタシプラス」の顧客情報やサイト内での行動ログなどのデータを蓄積し、分析しています。同社ではこのビッグデータを活用し、サイトの5周年を記念した顧客への広告配信に細かいセグメンテーションを導入し、商品購入率を約2.5倍にしました。 従来は「ターゲティング広告」が主流で、性別や年代といった情報をもとに広告配信を行っていました。それに対し、同社ではDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)で管理した膨大なデータを活用に落とし込むことで、「顧客が何を考えているのか」に寄り添ったコミュニケーションができるようになりました。 そこで同社は、分析結果をもとに会員登録済の顧客とまだ登録していない顧客によって、クーポンの内容や通知のタイミングを細かく分けました。その結果、ターゲティング広告よりも高い商品購入率を達成しています。 参考:DMPを導入しリターゲティング広告の精度と効果を上げた事例6選    資生堂「ワタシプラス」にKARTE導入〜プライベートDMPと連携し、全ての顧客接点で伴走型コミュニケーションを実現〜|CX Clip    CDP導入事例 – 株式会社資生堂|TREASURE DATA

事例2. 生産物の顧客評価を収集し、養殖家の売上を120%アップ【株式会社ビビッドガーデン】

生産者から食材を直接購入できるオンラインマルシェ「食べチョク」を運営する株式会社ビビッドガーデンでは、顧客からの評価を生産者や食材ごとに蓄積しています。このビッグデータの分析によって「どの食材の評価が高いか」が明らかになり、生産者は収穫量などを調整しやすくなりました。 それまでのデータなしでの生産は手探りで、生産者にとっては苦しい状況もありました。しかし、評価が高かった土の条件や収穫時期などのビッグデータをもとに同社がサポートを行うと、生産量の調整に加えて、農産物の品質を高められるようになりました。その結果、ある養殖業者では、ひと月の売上が前年比120%超を実現しています。 参考:生産者の事例|株式会社ビビッドガーデン    【業界別】ビッグデータの最新活用事例|Techfirm Blog    事前に収入を予測できる“データドリブン農業”構築へ、食べチョクが農業IoTとの連携を開始|TechCrunch Japan

事例3. データ分析により、営業方針決定を迅速化【株式会社グッデイ】

九州北部や山口県を中心にホームセンターを展開している株式会社グッデイでは、BIツールを導入し、POSデータや社内のさまざまなデータの可視化に取り組んでいます。 コロナ禍には蓄積してきたデータに加え、感染者数などのオープンデータやGoogle公表の人の移動状況のデータを組み合わせて分析し、営業時間を通常どおりに継続することを決断しました。これは、同社の場合は「時短営業がかえって密の状況を招く」と立証できたためです。 このように、判断が難しいイレギュラーな状況でも、社内外のビッグデータを組み合わせた分析が、早急な経営判断を可能にしています。 参考:おすすめPOSシステム比較5選!料金、特徴、多機能、飲食店に特化したシステムなど    蓄積した情報を売上につなげる「データ分析」の代表的な手法10選

ビッグデータ分析のために準備するべき2つのこと

1.データを収集し、蓄積する

当たり前ですが、分析する前にはデータを集めなければなりません。 どの企業も顧客の購買履歴や営業情報などは管理しているはずですが、各情報がの質を一定にするために、データの収集先としてCRMやSFA、DMPなどの管理ツールがあると良いでしょう。 また、Webスクローラーやスクレイピングなどを使えれば、大量の情報をWeb上から集めることができます。

データの質を高めるために、クレンジングを行う

データの収集後には、「データクレンジング」と呼ばれる作業が必要です。データクレンジングは、蓄積・収集した膨大なデータを一定の基準で整えることを言います。 クレンジングを行ったデータは信頼性が高まるため、マーケティングの戦略や商品・サービスの販促にも役立ちます。反対に、整えていないデータを使えば、分析結果が大きく変わる可能性があります。詳しい手順については、下記の記事を参考にしてみてください。 データ分析に必要な「データクレンジング」とは?実施すべき理由と手順 加工前のデータには、表記が統一されていない情報や、不要なデータ・重複データなどのふぞろいなデータが含まれていることが多くあります。 そのため、分析に進むより前に「ビッグデータを活用できる状態に最適化すること」が重要と言えます。なお、蓄積されているデータ量が多い場合、データクレンジングにより多くの時間がかかります。最初に一度だけではなく、定期的にデータを整えましょう。

データの整え方の具体例

データ表記の統一や修正例は、以下のとおりです。

一つの項目に半角・全角の数字や漢数字が混在している税込や税抜の記載がない日付の年号に「西暦」と「和暦」が混在している数量の単位が違う

重複や誤字、表記ゆれ、一部欠如などの正確でないデータが含まれていると、分析結果が大きく変わる可能性もあるため、データクレンジングを定期的に行うことが大切です。 参考:データ分析に必要な「データクレンジング」とは?実施すべき理由と手順    データクレンジングとその始め方|株式会社NTTデータ グローバルソリューション    データ蓄積とは?欠かせないシステムや活用後のデータの流れを解説|パーソルプロセス&テクノロジー    ビッグデータ収集前に知っておくべき3つの処理|keywalker

ビッグデータを分析するための手法6つ

データ分析の方法はいくつもありますが、本記事執筆にあたって調査するにあたり頻出した6つの分析方法をまとめました。分析手法自体はとても有名で、書店で専門書籍を探すことができます。通常のデータに対しても使えるものなので、自分で分析できないまでも理解しておくとよいでしょう。 ここでは、それらの分析方法の分析手順や利用法、分析対象などをそれぞれ解説します。

クロス集計:さまざまな属性別の分析ができる

クロス集計は、属性ごとの情報収集やデータ分析を行う際に用いられる分析方法です。例えば世代別に数個のアンケートを実施して、世代ごとの傾向や嗜好を把握することが可能です。

分析の手順について

クロス集計を行う際は、データを収集する属性を決定し、アンケートを実施します。得られたアンケート結果を元にさらに必要であれば属性や項目を細分化して、再びアンケートを実施します。

分析で調べられること

ビッグデータをクロス集計して分析することにより、得られた分析結果から単純な集計方法では得られなかった属性別の傾向やニーズを読み取ることができます。 例えば男女別や年代別、地域別や未婚既婚別など、アンケート内容に即した効果的な属性を設定して収集することにより、グループ間の回答傾向を把握できるようになります。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

クロス集計は、業種や業界を問わずさまざまな企業において用いられる集計方法です。ビジネスの現場だけでなく、行政や各種メディア、身近な例であれば各家庭の家計簿の作成の場面でも、クロス集計は行われています。 クロス集計は複雑な計算式を用いず結果を比較しやすいため、グラフと合わせてプレゼンの資料や企画書に取り入れるケースもよく見受けられます。

回帰分析:結果に対する要因を把握できる

回帰集計は、膨大な収集データから異なるデータの関係性を比較し分析する集計手法です。データ同士を比較し定量的に分析することによって、集計結果に対する原因を探ることができます。

分析の手順について

回帰集計の分析手順として、まずは異なるデータの関係性を定量的に分析します。例えば飲食店が今後の販売戦略を立てるために回帰集計を行う場合、月別の「来店数」と「広告宣伝費」の2つのデータの関連性を定量的に分析することにより、来客一人当たりの広告宣伝費を算出することが可能になります。

分析で調べられること

回帰集計を行うことにより、得られた分析結果に対する原因を推測できるようになります。来店顧客が増加したという結果に対する原因が広告にあったのかクチコミにあったのか、新商品にあったのか具体的に把握できるようになります。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

回帰集計は主に何らかのサービスを提供したり、何らかの商品を開発している企業が用いる分析方法です。商品開発やサービス提供の場面では、顧客の声や購買行動が非常に参考になります。

アソシエーション分析:隠れた法則をみつけだす

アソシエーション分析とは、顧客データを集計しデータの相関性を割り出す分析手法です。データ単体ではなかなか見いだすことができない隠れた法則を見つけ出し、その法則を今後の販売戦略などに役立てることができます。

分析の手順について

アソシエーション分析の手順は、まずは顧客が購入した商品をデータとして保存します。その商品を購入した顧客が他にどんな商品を同時に購入しているのかデータ分析することにより、Aの商品を購入した人が同時にBの商品も購入しているといった相関性を把握することができます。

分析で調べられること

アソシエーション分析を行うことにより、得られたデータから商品同士の関連性を見いだすことができます。アメリカのスーパーで行われた調査結果によれば、オムツを買った人は同時にビールを購入している傾向が高いことが判明し、オムツとビールを近くに並べたところ両者の売れ行きが向上した事例がありました。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

実際には、ネット通販の経営者やスーパー、小売などの実店舗経営をしているオーナーなどがアソシエーション分析を用いていることが多いようです。取り扱いデータの相関性を計測して今後の販売戦略の構築に役立てることができるのがその理由です。

決定木分析:複数の要因と結果の関係性から強い要因を把握できる

ビッグデータの分析方法の中に、決定木分析があります。アンケートを行いクロス集計を繰り返すことによって複数の要因から関係性を見出し、強い要因を把握できる分析方法です。

分析の手順について

決定木分析の手順は、アンケート調査を行い得られた調査結果を元にクロス集計を繰り返します。決定木分析を行うことにより樹木のような経路図が作成され、今後のターゲットを絞り込む際の判断材料とすることができます。

分析で調べられること

決定木分析を行うことにより、「予測」「判別」「分類」を行うことが可能となります。ターゲットを絞り込むことによって自社サービスの購入可能性が高い属性を予測することができたり、自社商品に対して満足度の高いユーザーはどのような属性なのか判別し、分類できるようになります。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

決定木分析は、自社で何らかのサービスを提供したり、オリジナル商品を開発している企業によって導入される傾向があります。

クラスター分析:似たもの同士をグループに分け分析する

クラスター分析の「クラスター」とは、「集団」を意味します。クラスター分析とは、異なる種類が混ざり合った集団の中から互いに類似した集団をグループに分け、グループごとに分析する方法です。

分析の手順について

クラスター分析では、アンケート調査の質問項目や回答項目を内容の類似性や違いの距離感によってグルーピングし、それぞれのグループの特徴を観察したりクロス集計を行なうことにより行動パターンや傾向を分析します。

分析で調べられること

クラスター分析を実施することにより、多くの情報の中から一定の仮説を元にした情報同士の関連性を調べることができます。例えば企業がクラスター分析を行うことにより、見込み顧客の特性分析やブランドのポジショニング分析を行うことができます。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

何らかのサービスを提供したり自社商品を開発している企業が、クラスター分析を行う傾向があります。クラスター分析を行うことにより、見込み顧客の潜在的なニーズを把握でき、ニーズに適した商品開発に役立つ情報を得ることが可能になります。

主成分分析:多種類のデータの要約ができる

主成分分析とは、複数の指標データから、より少ない指標データに要約する分析手法です。主成分分析は、複雑で分かりにくいデータをシンプルなデータに要約することにより、データ情報を分かりやすく可視化できる特徴があります。

分析の手順について

主成分分析の分析手順は、まず最初に分析目的を明確化し、分析目的に沿ったアンケートを作成します。アンケートを実施して結果を収集したのち、統計ソフトを利用して分析を行います。

分析で調べられること

取扱商品の顧客満足度やブランドイメージ調査に主成分分析を取り入れることにより、商品の総合的な評価や顧客がその商品に対して重視しているポイントを推測できるようになります。商品の改良や新商品の開発の際に活用できる重要な材料を得ることができます。

どういう人が用いるまたは選ぶ分析方法なのか

主成分分析は、メディアや研究機関、様々な商品やサービスを開発している企業やメーカーで取り入れられています。数多くのアンケート結果を分析して総合的な指標を獲得したり将来予測を獲得できることから、あらゆる業界の開発現場において活用されています。

ビッグデータ分析や活用を成功させる3つのポイント

ビッグデータ分析やビッグデータの活用を成功させるためには、3つのポイントがあります。

ビッグデータ分析は何度も重ね深く洞察することが大切分析方法だけでなくビッグデータの整備や保管方法も注目ビッグデータ活用にはコストがかかることを覚悟する

以下、それぞれ具体的に解説します。

1.ビッグデータ分析は何度も重ね深く洞察することが大切

ビッグデータを分析する際は、一度に全てのデータを分析するのではなく、回数を重ねながら深い洞察を行うことが大切になります。重要度の高いものから分析を開始し、そこで得られた分析結果をさらに分析して洞察を重ね、深い分析結果を得ることができます。 改善を繰り返すことにより、具体的な経営戦略策定に役立つ分析結果が得られるのです。

2.分析方法だけではなくビッグデータの整備や保管方法も注目

ビッグデータを取り扱う際は、社内に散在しているビッグデータを個別に整備するのではなく、会社内全体で共有できるシステムが必要になります。部門ごとに保管すると部門間の情報共有に手間がかかり、効率的なデータ運用が阻害される恐れがあるからです。 さらにビッグデータには顧客から預かった個人情報が含まれることが多いことから、セキュリティ対策は入念に行う必要があります。

3.ビッグデータを活用するにはマネジメント層の理解が必要

企業でビッグデータを活用する際は、経営層やマネジメント層のビッグデータに対する意識を改革することが重要です。ビッグデータの分析は短期間で簡単に行えるものではありません。一定のトライ&エラーが許される環境の構築と、ビッグデータに関する意思決定権の付与が大切になります。 また、分析結果が必ずしも求めている結果にならないことも考えられます。無理やり意図通りの分析結果にしようとすれば、正確な予測が立てられなくなります。また社会的にも余計なデータを排出して損失になりかねませんので注意してください。 参考:総務省 ICTスキル総合習得教材 3-1:ビッグデータの活用と分析に至るプロセス

ビッグデータを分析するには主に2つのアプローチがある

ビッグデータの分析には専門性が求められるため、「企業にサポートを依頼する」または「ツールを導入する」という2つのアプローチが最適です。専門家による分析を導入したい場合は企業への依頼を、自社内で分析のノウハウを蓄積したい場合はツールの導入を検討すると良いでしょう。 ビッグデータの分析は、単発で終わらず、継続的に分析・改善を繰り返すことが重要です。分析結果は、営業や広告配信に限らず企業の経営戦略にも関わるため、自社内で完結させようとすると人材や時間などのコストが高くなりがちです。 分析を受注している企業の場合、ノウハウや実績を有するほか、データアナリストやデータサイエンティストといった専門家が在籍しているのが一般的です。そのため、自社内では気づくことができない課題やその解決策の助言を得られる、コンサルティングを依頼できるというメリットがあります。 また、企業によってその分析手法はさまざまです。AIや独自のアルゴリズムを活用する企業や、他社のBIツールと連携するも企業、統計学・金融工学の知見も用いて話し合いを重ねながらオーダーメイドの開発から行う企業もあります。 一方、ツールには有料で導入できるものもあれば、無料で利用できるものもあります。機能には差があるので、溜まったデータの処理を苦手とする社員が多い場合は、データの可視化に加え、今後のシミュレーションが可能なツールを検討してみましょう。 ツールの選定には、下記の記事もぜひ参考にしてみてください。簡単に情報の可視化ができるBIツールを用いれば、分析にかかる時間を短縮でき、各種資料へその分析結果を活用することもできます。 【2021年版】BIツール厳選31選を徹底比較!絶対失敗しない選び方のポイントまで解説 ここからは、おすすめの企業4社とツール4つをそれぞれの実績事例とともに紹介していきます。 

ビッグデータの分析ができる企業4選

ビッグデータ分析を依頼できる企業として、今回は下記の4社を紹介します。 ここでは、各社それぞれの特徴・サポート体制・費用・取引実績・こんな人におすすめ、といった項目に加え、実績事例も挙げています。データ分析だけでなく、今後の経営に関わるコンサルティングなどのサポートも受けたい場合は、Webサイトに記載の実績を確認のうえ、見積もりを依頼してみてください。

企業1. 株式会社ALBERT

大手企業との取引実績が豊富な株式会社ALBERTは、その分析力の高さと企業のビジネス課題に対する解決策を導き出すコンサルティングが評価されています。同社では、データアナリストやデータサイエンティストの育成にも力を入れているほか、AIを活用した独自プロダクトの開発ができることも特長です。 【実績事例/集英社】 集英社は運営するファッション通販サイト「FLAG SHOP」(現・HAPPY PLUS STORE)に、株式会社ALBERTが開発した「親和性スコア」を用いて、広告効率を1.6倍に改善し、売上の増加に成功しています。 集英社ではそれまで購買データをもとにした分析を行っており、通販サイトに蓄積されていた行動履歴のデータは活用できていませんでした。そのため、既存顧客の全員に同じ紙のカタログ通販紙を送付していました。セグメントを細かく区切ったほうが効果がでると分かっていたものの、人手不足でなかなか実行できないことも悩みでした。 そこで、外部パートナーとして同社に相談しました。同社が用いた親和性スコアは、購買データや顧客の属性データ、直近の行動履歴などの様々なデータを用いて、顧客それぞれがどのショップ・ブランドとどのぐらいの親和性があるかを測るものです。分析自体は統計的な処理をしていますが、その定義については話し合いを重ねています。 通販サイトでも顧客のセグメントにあわせた購買予測を行い、コンテンツを出し分けていった結果、カタログ配布先を5万部から3万部に減らしても売上は落ちませんでした。加えて、カタログの発行コストの削減にもつながっています。 参考:MarkeZineインタビュー 「親和性スコア」で広告効率1.6倍! FLAG SHOPが目指す 1to1マーケティング実現のカギとは|株式会社ALBERT

企業2. 株式会社SUPER STUDIO

ECサイトのカートシステム「ec force」を提供する株式会社SUPER STUDIOでは「ecforce teams」という、月額支払のサブスクリプション型でシステムとコンサルティングの支援も行っています。通販サイトのほか、美容・医療業界のD2C(Direct to Customer)推進もしており、分析が不慣れな企業のサポート実績があります。 また同社では、顧客情報のほか、配送遅延や返品・キャンセルなどの割合も分析し、原因を明らかにすることで改善につなげられます。加えて、ECサイトの各店舗ごとにプロジェクトマネージャーとエンジニアが専任でサポートするため、質問への回答やシステムアップデートの際のフォロー体制に強みを持っています。 【実績事例/株式会社Linc’well】 オンライン診療やホームケアを支援する医師監修のシャンプー・サプリなどの提供を行っている株式会社Linc’wellでは、ecforce teamsのプランの利用により、初月から大きくビジネスを伸ばすことに成功しています。 それまでは社内にD2Cブランドの経験があるメンバーがおらず、KPIの追い方や分析手法がわからない状態でした。そのため、ecforce teamsは定期的なミーティングを通して、今後コールセンターや在庫管理、配送が大変になるという新たな課題の予測や、成長ステージごとの提言を行いました。 その結果、株式会社Linc’wellは、広告配信やSEO対策を順調に進められたほか、今後の経営にも備えられ、数ヶ月・半年と成長率を維持することに成功しています。 また、定期的なミーティングや分析のフィードバックを通して、社内メンバーの分析の知見も広げられました。 参考:D2C未経験からオンラインヘルスケアNo.1へ。ecforceとecforce teamsがリンクウェルにもたらしたものとは|ec force

企業3. 澪標アナリティクス株式会社

データ分析特化型コンサルティングで定評のある澪標アナリティクス株式会社では、AIや統計学、機械学習、データマイニング、数理最適化などの手法を組み合わせたデータ分析を行っています。そして、ゲーム業界に特化したデータ分析が可能な点が、大きな特長と言えます。 コンサルティングのほか、企業にあわせてPDCAサイクルをカスタマイズしたデータ分析やシステムを用いた分析の自動化も可能です。 【実績事例/モブキャストゲームス】 海外市場での売上拡大を目指していたモブキャストゲームスは、澪標アナリティクス株式会社の協力を受けて、分析体制の強化を行いました。 背景には、近年の新作ゲームの開発・マーケティングのコストの上昇がありました。海外市場では数億円から10億円という規模で行われるマーケティングに加えて、ゲームの改善を継続したサイクルで行う体制が必要でした。 そこでまずは、IBMの統計分析ツールを導入して、データ分析の基盤を整備しました。その後、新たなツールを用いて、データの抽出・加工・分析までの一連の流れを自動化し、より深掘りした分析を簡単に実施できるようにしています。 定型的な分析作業を自動化する体制を整えたことで、高度な分析が簡単に行えるようになると、経験の浅い社員でも自分なりの仮説検証を実施できるようになりました。 参考:株式会社モブキャストゲームス|IBM

企業4. 株式会社ヴァリューズ

国内外の市場調査に知見を持つ株式会社ヴァリューズでは、行動ログの分析サービスのほか、企業に蓄積された社内データを同社のプロのデータアナリストが可視化するサービスを提供しています。 ダッシュボードで企業や市場の状況を確認できるように提供したり、事業の改善提案や、その後のPDCAサイクルのサポートも行っています。 【実績事例/JA全農】 JA全農は、2001年よりEC通販サイト「JAタウン」を運営しています。株式会社ヴァリューズと出会って以降、事業収支は毎年二桁の急成長を続けています。 もともとJA全農では、消費者だけでなく出品者にもマーケティング施策を打つ必要があったため、データソースの選択や分析方法に悩んでいました。 株式会社ヴァリューズの支援により、Webサイト解析ツールの導入や会員情報、消費者の行動データといった4つのデータをBIツール「Tableau」を使った分析を開始しました。また、BIツール上でのやり取りだけでなく、月1回は対面で議論や仮説立ても行いました。 途中、分析作業に適さなかい状態にあったデータは分類方法を見直したり、異常値の発生原因をデータをもとに究明することもありました。 それぞれのデータを「意思決定」のフェーズにあわせて使い分けながら、柔軟に見ることで、課題の解決の意思決定を進めたり、方向修正を行えるようにしています。 参考:JA全農が実践したデータドリブン運営につながる可視化・分析とは|MarkeZine Day 2020 Springレポート|マナミナ

ビッグデータ分析や活用を円滑にするBIツール4選

ビッグデータの分析を社内で行う場合は、あまり専門知識を必要とせずできるだけ多くの人が利用しやすい機能性の高いツールを導入することが大切です。ここでは、社内でビッグデータ分析を行う企業におすすめのBIツールから、厳選した4つを紹介します。 必要な機能が毎月のデータの可視化のみであれば、無料のツールでも十分でしょう。しかし、種類の異なるデータをよりさまざまな角度から分析・検証したいという場合には、より高度な分析ができる有料ツールの導入もおすすめです。 各ツールについて、特徴・初期費用・料金プラン・導入企業・こんな人におすすめ、といった項目に加え、実績事例も挙げているので、ぜひ参考にしてみてください。

ツール1. Domo/ドーモ株式会社

米国を拠点とするBIベンダーのDomoでは、散財した複数のデータベースにある情報の統合やデータクレンジングも可能なプラットフォームを提供しています。さらに、データサイエンティストの機能も有しており、1つで何役もの効果を発揮します。 【実績事例/オイシックス・ラ・大地】 一般消費者へ有機野菜や無添加の加工食品などを届けるオイシックス・ラ・大地では、Domoの導入によって毎日数時間かかっていたデータの抽出時間を削減し、タイムリーに顧客の動きを把握できるようになりました。 これまでも同社では「ファクトベース」での意思決定を行う風土があり、そのためのデータ抽出に数時間を消費していました。また、データ集計業務が多く、そちらにも時間がかかっていました。個人のスキル差も一つの原因で、集計レポートの定義もバラバラで、データの分析には課題が多くありました。 Domoの導入後は、抽出が自動化され、情報システム部門は本来の業務に集中できるようになりました。また、30分に1回は顧客の動きをタイムリーに把握できるようになり、データの変化を確認しながら「結果を出すまでがゴール」という風に、社員の意識にも変化が起きています。 参考:DOMO+オイシックス・ラ・大地|Domo    ドーモ、BIツールの最新機能群を発表–エイベックスのデータ活用も支援|ZDnet Japan

ツール2. Zoho Analytics/ゾーホージャパン株式会社

Zohoが提供するBIツール「Zoho Analytics」は、ビッグデータの分析・可視化をAIがサポートします。外部のシステム・ソフトウェア・アプリなどからのデータ取り込みを自動化可能で、データの集約にかかる工数を節約できるほか、社内外と分析結果の共有も可能です。 また、ZohoのインテリジェントアシスタントのZia(ジア)にデータに関する質問をすると、レポートを自動生成してくれる機能もあります。 【実績事例/株式会社星野リゾート】 ホテル・ブライダル事業を展開する株式会社星野リゾートでは、ブライダル事業の業務効率改善や顧客対応の品質向上のために、「Zoho CRM」で得られるデータを、「Zoho Analytics」によって分析しました。その結果、同社のブライダル施設への来館予約後のキャンセルの50%削減を実現しています。 同社が展開するブライダル事業では、全国各地の営業拠点でExcelに入力した顧客情報があったので、全社の成約率を把握するためには集約し、手作業で集計する必要がありました。そのため、数値の把握が2週間単位になっており、タイムリーな状況判断や対応が困難でした。 また、来館予約はしたものの実際には施設に来館しないケースもあります。そういった場合の原因究明の対策にも、従来の顧客情報の管理方法は適しておらず、過去の実績や経験をもとにした仮説に頼っている状況でした。 まずはZoho CRMを用いてデータを集約し、さらにZoho Analyticsと連携したことで、営業プロセスの詳細な分析を行いました。これにより、「予約から来館までの期間が一定日数を超えるとキャンセル率が上がる」という結果が出ました。従来に比べて、客観的なデータに基づいた施策を実施できるようになったことで、来館予約のキャンセル率は50%削減となりました。 参考:業務スピードが圧倒的に向上!プロセスの最適化でキャンセル率50%減を実現|ZOHO Japan    ゾーホージャパン、星野リゾートが「Zoho CRM」と「Zoho Analytics」を導入|日本経済新聞    ゾーホー、BIツール「Zoho Analytics 5.0」を提供–新たにデータ準備ツールを統合|ZDnet Japan

ツール3. Target Finder/東急エージェンシー

長年のビッグデータ分析の実績がある東急エージェンシーが提供している「Target Finder®」では、複数のデータをもとに行動パターンによるタイプ分けを行ったり、見込顧客の発見が可能です。また、分析前の仮説立てが不要で操作も簡単なため、導入によって作業効率もアップできます。 定額制の料金プランのほか、データを預けて結果を報告してもらう契約や、コンサルティングも受けられるサービスも提供しています。 【実績事例/株式会社インテージ】 株式会社インテージでは、Target Finderの導入により、保有する顧客の購買行動、メディア接触行動データにもとづいて、迅速に注目のセグメントの発見ができるようになりました。また、これらがノンプログラミングで大規模なログデータをデータサイエンティスト以外も活用できるため、分析業務の効率化にもつながっています。 参考:株式会社インテージ Target Finderにより注目セグメントの発見を即時化。さらに分析業務の効率化を実現!|Tokyu Agency    行動に潜むニーズを顧客データから洗い出す! AIの自動分類が営業高度化の“鍵”に|IT Leaders

ツール4.KARTE Datahub/株式会社プレイド

CX(顧客体験)の向上に力をいれている株式会社プレイドでは、社内外に分かれているデータを統合して分析・可視化するツール「KARTE Datahub」を提供しています。 さまざまな種類の大量データを「顧客軸」で結びつけ、Google BigQueryと連携してデータを活用しやすい状態にします。また、ノンプログラミングで使えるテンプレートが100種類以上用意されているため、それらを使えば簡単にデータ分析が可能です。 【実績事例/株式会社不動産SHOPナカジツ】 愛知県・福岡県・千葉県を中心に不動産事業を展開している株式会社不動産SHOPナカジツでは、運営している不動産情報サイトへの訪問数に比べて、会員登録の数が少ないことが悩みでした。そこで、同社が保有するさまざまなデータとKARTE Datahubを連携したところ、顧客に対するアプローチの改善につながっています。 それまでは、物件のパノラマ画像や動画の加工に時間がとられていました。しかし、データ分析の結果、それらが顧客にほとんど見られていないと判明しました。 実際には、顧客はサイト内にあるGoogle Mapを使って、近隣の物件情報を見ていたと分かり、それにあわせて問い合わせボタンの位置調整や、メール配信の内容を改善するアイデアにたどり着くことができました。現在は、顧客の行動履歴を用いたレコメンド機能の実装を進めています。 参考:お客様それぞれにあったコミュニケーションを通じて、良い住まいとの出会いをつくりたい―――不動産SHOPナカジツ導入インタビュー|CX Clip

まとめ

今後あらゆる業界において、ビッグデータを効率的に分析して経営戦略に役立てることが必要になってきます。ビッグデータを上手に活用することにより今後の経営戦略の策定に役立てることも可能です。 ビッグデータを正確に分析するためには、分析ツールの導入を視野に入れることをおすすめします。しかし分析ツール選びには注意が必要です。やみくもに選ぶのではなく、データの内容や量、分析ツールの使い勝手や導入予算などを考慮して最適なものを選ぶことが大切です。 データを利用できることは今後、どんどん価値があがっていくはずなので、この機会にチャレンジしてみるのも良いでしょう。

【広告代理店必見】広告データを自動で集計し分析を促進するツール

本記事ではビッグデータの分析手法について解説しました。Google広告やYahoo!広告など複数の広告媒体を扱っていると大量のデータを扱う必要があるため進捗管理に時間がかかります。 広告の膨大なデータを活用するなら複数媒体からデータを自動で集計・可視化できるツールの導入がおすすめです。 例えば、「ATOM」は500社以上に導入されているその代表的な例です。今回特別にサービス資料を用意したのでぜひダウンロードしてみてください。

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