電子契約では、契約の合意が成立した証拠となる直筆の署名や押印の代わりとなるのは、暗号化のデジタル技術を利用した電子署名やタイムスタンプです。 近年、電子契約を導入する企業が急増しています。その背景には、「脱はんこ」を目指す政府の後押しやコロナ禍におけるテレワークの推進があります。 今後、取引先とのスムーズな契約締結のためには、電子契約の導入が必須となっていくでしょう。 よって本記事では、すべての企業においてできるだけ早く導入すべきといえる「電子契約」について、基礎知識からやり方まで詳しく解説します。 「電子契約に興味がある」 「うちの会社でも、時代に乗り遅れないように電子契約を導入したい」 …という方におすすめの内容となっています。 この解説を最後までお読みいただければ、「電子契約の基本」はもちろん、電子契約導入の実務で何をすれば良いか、具体的に把握できるようになります。電子契約を導入するうえで、大いに役立つはずです。 ではさっそく「電子契約」について解説します。 【契約業務が10分で完了】電子契約サービス「jinjerサイン」

電子契約とは

まずは電子契約の基礎知識から解説しましょう。

電子契約とは電子契約とは電子ファイルの契約書を交わすことで締結する契約のこと電子契約の流れ法律的には電子契約と書面の契約の有効性は変わらない一部の書面が必要だった契約も法整備により電子契約可能に電子契約の3つのメリットメリット1:契約書に収入印紙を貼る必要がないメリット2:契約フローを効率化できるメリット3:契約書の管理がしやすい電子契約の2つのデメリットデメリット1:契約相手が電子契約に応じないことがあるデメリット2:過去の日付での契約書作成ができない積極的に電子契約を導入すべき理由電子契約を導入する企業が急増しているコスト削減・業務効率化のメリットが大きい電子契約するために必要なものとは?電子署名タイムスタンプ電子契約のやり方ステップ1:電子契約サービスに申込みをするステップ2:電子証明書申請をするステップ3:PINコードを登録するステップ4:電子契約を締結するおすすめの電子契約サービス 6選電子契約の注意点PINコード(秘密鍵)の管理は厳重に行う電子契約サービス利用終了に備えてバックアップを取っておくまとめ

電子契約とは電子ファイルの契約書を交わすことで締結する契約のこと

電子契約とは、電子ファイルの契約書を交わすことで契約を締結する方式の契約のことです。 紙の書面の契約書の代わりに、PDFやWordなどの電子ファイルで契約書を作成します。書面の契約書では、契約の合意成立の証拠として直筆の署名や押印を行いますが、電子契約では「電子署名」や「タイムスタンプ」を利用します。 電子署名は、暗号化のデジタル技術を使って、その電子文書(契約書)を本人が作成したことを証明するものです。タイムスタンプは、ある時点にその電子文書が存在したことを証明するもので、電子文書が改ざんされていないことや契約締結日時の証明になります。 ※電子署名やタイムスタンプの詳細は後ほど「電子契約に必ず必要なものとは?」にて解説します。

電子契約の流れ

電子契約を行う実際の流れを見てみましょう。下図の下の段は、電子契約サービスを利用した場合の電子契約のフローです。 まず契約の当事者のうち、片方が電子ファイル(PDFなど)で契約書を作成します。自社・取引先のどちらが契約書を作成するかは、紙の契約書で契約を締結するときと同じと考えましょう。 従来の紙の契約書では、自社が契約書を作成していたのであれば、電子契約の契約書も自社で作成するのが一般的です。 電子ファイルで契約書を作成したら、電子契約サービスの管理画面からアップロードし、電子署名を付与します。同時に、取引先へ通知メールが配信され、取引先はその通知メールに記載された内容に従って電子署名を行います。 これだけで電子契約の締結は完了です。その後、契約書はサーバに保管されます。

法律的には電子契約と書面の契約の有効性は変わらない

電子契約と聞くと、「紙の書面で交わしていた契約を、電子契約にしても法律的に有効なの?」と疑問に感じる方が多いようです。結論からいえば、書面の契約書でも電子ファイルの契約書でも、法的な有効性は同じです。 というのは、ほとんどの契約において、そもそも契約書は必須ではありません。契約書なし・口頭のみでも契約は成立します。これは民法522条1項にて定められているものです。 ただし、口約束では後々トラブルのもととなるリスクがあります。そこで、トラブルを避ける目的で、契約の当事者同士が自主的に証拠として作成するのが契約書となります。 つまり「契約の証拠」という役割さえ担うことができれば、契約書の形式は書面であっても電子ファイルであっても問題ないということになります。

一部の書面が必要だった契約も法整備により電子契約可能に

「契約は、口頭でも書面でも電子契約でも成立する」というのが基本ですが、一部に例外があります。典型的な例として挙げられるのが、代金の支払いや借金返済の保証人になるときに締結する「保証契約」です。 保証人の意思確認を確実に行うために保証契約は書面でしなければならないと定められていますが、電子契約でも書面で契約されたものとみなすと規定されています。 保証契約のほかにも、紙の書面が必要な文書は多数ありましたが、その多くは2005年施行のe-文書法(電子文書法)や電子帳簿保存法などの法整備によって、電子化(ペーパーレス化)が可能になっています。 まとめると、企業が締結する契約は、基本的にすべて電子契約が可能な状況といえます。 参考:事例に学ぶ「ペーパーレス化」働き方改革を失敗しないための方法、ツールとは

電子契約の3つのメリット

電子契約には、どんなメリットがあるのでしょうか。3つのメリットをご紹介しましょう。

メリット1:契約書に収入印紙を貼る必要がない

1つめのメリットは「契約書に収入印紙を貼る必要がない」ことです。 紙の書面で契約書を交わす場合、多くのケースで収入印紙の貼付が必要です。例えば、取引の基本契約書、売買契約書、請負契約書、業務委託契約書、代理店契約書、土地賃貸借契約書などは、印紙税の課税対象となる文書です。 参考:国税庁 しかし、紙の書面では課税対象の契約でも、書面ではなく電子契約で交わせば、収入印紙を貼付する必要がなくなります。 実際に、国会答弁において「文書課税である印紙税においては、電磁的記録により作成されたものについて課税されない」ことが確認されています。 印紙代のコスト削減はもちろん、印紙を購入して貼付する手間も省けることは、大きなメリットといえるでしょう。

メリット2:契約フローを効率化できる

2つめのメリットは「契約フローを効率化できる」ことです。 紙の書面で契約書を作成する場合には、契約書を2通作り、各契約当事者が1通ずつ所持するのが一般的です。 具体的には、一方の当事者が契約書を2通印刷し、署名捺印したうえで相手方当事者に郵送し、さらに相手方当事者が署名捺印して1通を返送する──といったフローになります。 印刷・封入・郵送の手間も時間もかかっているのが現状でした。実際に、契約書の実務に関わっている方にとっては「契約書のやり取りは手間がかかる」と感じている方が多いでしょう。 Web完結の電子契約なら、これらの手間はすべてなくなります。 インターネット上のやり取りならタイムラグはありません。契約フローは効率化され、リアルタイムでのスピーディな契約締結が可能です。

メリット3:契約書の管理がしやすい

3つめのメリットは「契約書の管理がしやすい」ことです。 コンプライアンス(内部不正の防止など)やセキュリティの観点から、契約書を適切に管理することは非常に重要です。紛失・盗難・改ざんなどのリスクがある書面の契約書と違って、電子契約であれば、容易に契約書の管理ができます。 さらに、社内のさまざまな部署に散らばりがちだった契約書を電子契約にして一元管理すれば、「監査に必要な契約書を廃棄してしまった」「契約の有効期限が切れていることに気づかない」といったトラブルを未然に防ぐことができます。

電子契約の2つのデメリット

電子契約には、マイナス面もあります。2つのデメリットをご紹介しましょう。

デメリット1:契約相手が電子契約に応じないことがある

1つめのデメリットは「契約相手が電子契約に応じないことがある」ことです。 当然のことながら、契約には必ず相手が存在します。契約の相手方が電子契約に応じずに、紙の書面での契約を希望した場合には、電子契約の締結はできません。 契約の当事者全員が、電子契約に同意しないと電子契約できないことは、電子契約のデメリットといえます。

デメリット2:過去の日付での契約書作成ができない

2つめのデメリットは「過去の日付での契約書作成ができない」ことです。 紙の契約書では、例えば契約日と取引開始日を合わせるために、契約書に記載する日付を過去の日付にすることがあります(バックデートと呼ばれます)。 例えば、実際に契約書に署名捺印して契約締結した日付は4月15日なのに、契約書に記載する日付は4月1日にするといったケースです。 電子契約では「タイムスタンプ」によって契約日時を証明しますので、過去の日付での契約書作成はできません。 ただし、本来は契約日のバックデートは避けるべきといわれています。バックデートが原因でトラブルに発展するケースもあるためです。あくまでも契約日=締結日とするのが通常の運用です。 よって、電子契約では過去の日付での契約書作成ができなくても、ほとんどの企業では影響なしといえるでしょう。

積極的に電子契約を導入すべき理由

「電子契約に興味はあるけれど、導入すべきなの?」と、検討中の方もいるでしょう。 結論からお伝えすれば、積極的に、できるだけ早く電子契約を導入すべき状況となっています。その理由は大きく分けて2つあります。

電子契約を導入する企業が急増している

1つめの理由は「電子契約を導入する企業が急増している」ことです。 先ほど電子契約のデメリットとして「契約相手が電子契約に応じないことがある」とお伝えしました。電子契約の導入に乗り遅れると、契約の相手方の企業から「うちはすべて電子契約にしたいのに、アナログで対応してもらえない」と不満を持たれる可能性があります。 電子契約を導入する企業が急増している背景としては、政府のe-Japan戦略があります。e-Japan戦略とは、世界産先端のIT国家となることを目標に掲げた国家戦略です。 e-Japan戦略の流れで電子契約に関わる法整備がなされ、実際に電子契約サービス市場は拡大が予測されています。 ゆくゆくは、紙の契約書は廃止され、電子契約のみになる時代がやってくるでしょう。 時代の流れが電子契約化にある以上、足並みをそろえて早く電子契約に対応することが、契約の相手方となる取引先とのスムーズな契約につながります。

コスト削減・業務効率化のメリットが大きい

2つめの理由は「コスト削減・業務効率化のメリットが大きい」ことです。 先にご紹介したとおり、電子契約では収入印紙の貼付が不要・業務フローが効率化できる・契約書の管理がしやすくなるといったメリットがあります。 電子契約は、時代の流れに乗るだけでなく、「コスト削減と業務効率化という実利」が得られます。対して、大きなデメリットやリスクはありません。ぜひ積極的に導入を検討したいところです。

電子契約するために必要なものとは?

「実際に電子契約を行いたい」というとき、何があれば良いのでしょうか。 単に契約書をPDFやWordで作成するだけでは不十分で、契約書の作成者を証明する「電子署名」と、契約の締結日時を証明する「タイムスタンプ」が必要になります。 「なんだか難しそう」と感じるかもしれませんが、電子署名とタイムスタンプの機能を持つ電子契約サービスを利用すれば、専門知識は不要で簡単に電子契約を導入できますので、ご安心ください(電子契約サービスについては後ほど「おすすめの電子契約サービス 6選」にてご紹介しています)。 ここでは、電子署名とタイムスタンプの概要を解説しましょう。

電子署名

契約書は、契約の当事者本人が作成したことを証明する必要があります。紙の契約書であれば、手書きの直筆署名や押印がその役割を果たします。 電子契約において、手書きの署名や押印と同じ役割を担うのが「電子署名」です。電子署名では、電子文書に本人だけが持つ秘密鍵(署名生成鍵、プライベート鍵)を利用して署名を行います。 以下は電子署名の仕組みを図解したイメージ図です。 ITの知識がないと難しく感じるかもしれませんが、ここでは「秘密鍵を使った電子署名をすれば、電子契約で確実な本人証明ができる」ことを押さえておけば、問題ありません。 具体的な仕組みについて補足すると、電子署名の対象となる電子文書(契約書の電子ファイル)を「ハッシュ関数」と呼ばれる技術を用いて圧縮します。圧縮した結果が「ハッシュ値」です。 電子文書に対応するハッシュ値を、電信文書の作成者だけが持っている秘密鍵で暗号化した結果が、電子文書に対する「電子署名」となります。 「秘密鍵」は、例えば300桁〜1000桁の数字の組み合わせなど、膨大なデータ量となります。覚えることはできません。そこで、秘密鍵を利用するための「PINコード」を利用して電子署名を行います。PINコードとは、秘密鍵を利用するための暗証番号と覚えておきましょう。

タイムスタンプ

電子署名は「誰が・何を」を証明する役割を果たしますが、「いつ」という日時は証明できません。そこで電子署名と合わせて利用される技術が「タイムスタンプ」です。 タイムスタンプの役割は「ある電子文書が、ある時点に存在していたことおよびその時点から改ざんされていないことの証明」です。 まとめると、電子契約は「電子署名」+「タイムスタンプ」の2つの技術によって、契約当事者の本人証明や日時の証明を行っています。 具体的な電子契約のやり方は、次章で解説しましょう。

電子契約のやり方

企業において電子契約を導入するうえでは、「電子契約サービス」を利用する方法が一般的です。ここでは、電子契約サービスを利用して電子契約を行う方法を解説します。

ステップ1:電子契約サービスに申込みをする

まずは利用する電子契約サービスを選んで申込みをします。 電子契約サービスとは、秘密鍵やタイムスタンプの機能を持ち、クラウド上で電子契約書を保管できるサービスのことです。 さまざまな企業が電子契約サービスを提供していますので、自社に合うサービスを選びましょう。具体的な選び方は「【2021年版】おすすめ電子契約サービス13選を徹底比較!選び方のポイントも紹介」にて解説していますので、ご参照ください。 ここでは「GMO電子印鑑Agree」の画面を例にして解説します。 (1)申込みフォームから必要情報を入力します。 (2)届いたメールの情報をもとに、アカウントを登録してログインします。

ステップ2:電子証明書申請をする

電子証明書の管理画面上から、まずは秘密鍵を利用するための電子証明書申請を行います。細かな操作方法は、各サービスによって異なりますが、電話や書類による認証が必要です。

ステップ3:PINコードを登録する

署名を行うために必要なPINコード(暗証番号)の設定を行います。PINコードを入力することで署名が可能になります。

ステップ4:電子契約を締結する

ここまでのステップで、電子契約を締結する準備が整いました。電子契約の締結は以下のフローで行います。 契約書をアップロードして、署名者の情報(会社名・氏名・メールアドレスなど)を入力します。 確認して保存し、送信すると署名者に署名依頼のメールが送信されます。依頼メールに従って、署名者が電子署名の手続きを行うと、契約の締結が完了します。

おすすめの電子契約サービス 6選

おすすめの電子契約サービスを6つ、一覧表にまとめました。電子契約サービス選びにお役立てください。 詳しくは「【2021年版】おすすめ電子契約サービス13選を徹底比較!選び方のポイントも紹介」にて解説しています。ぜひ続けてご覧ください。

電子契約の注意点

最後に、電子契約の注意点を2つ、ご紹介します。

PINコード(秘密鍵)の管理は厳重に行う

1つめの注意点は「PINコード(秘密鍵の暗証番号)の管理は厳重に行う」ことです。 電子署名は、手書きの署名や押印に相当する法的効果が認められ得るものです。電子署名を行うために必要なPINコード(秘密鍵の暗証番号)は、厳重に管理しなければなりません。 また、万が一PINコードを紛失した場合には、新たに電子証明書を発行し直さないと、電子契約が利用できなくなります。 PINコード、秘密鍵は十分な注意をもって管理しましょう。

電子契約サービス利用終了に備えてバックアップを取っておく

2つめの注意点は「電子契約サービス利用終了に備えてバックアップを取っておく」ことです。 電子契約サービスでは、クラウド上に電子契約書が保存されています。例えば、電子契約サービスを解約する場合や、提供元の都合により電子契約サービス自体が終了した場合には、クラウド上の電子契約書にアクセスできなくなります。 対策としては、日頃から定期的に電子契約書のバックアップを取っておくと良いでしょう。電子契約サービスの管理画面から契約書のダウンロードが可能ですので、ダウンロードして手元にも置いておくと安心です。 なお、当然のことながら、電子契約サービスの利用を終了しても、そのサービスを利用して締結された契約の効力は継続します。

まとめ

電子契約とは、電子ファイルの契約書(電子文書)を交わすことで契約を締結する方式の契約のことです。電子契約では、書面の契約書の代わりに、PDFやWordなどの電子ファイルで契約書を作成し、契約の合意が成立した証拠として電子署名やタイムスタンプを利用します。 法律的には電子契約と書面の契約の有効性は変わりません。一部の書面が必要だった契約も法整備により電子契約が可能になっています。 電子契約のメリットは以下のとおりです。 電子契約のデメリットは以下のとおりです。 現在は、電子契約を導入する企業が急増していること・コスト削減・業務効率化のメリットが大きいことから、積極的に電子契約を導入すべき状況といえます。 電子契約のやり方は以下のとおりです。 電子契約の注意点として、PINコード(秘密鍵)の管理は厳重に行うこと、電子契約サービス利用終了に備えてバックアップを取っておくことにご留意ください。 おすすめの電子契約サービスは「【2021年版】おすすめ電子契約サービス13選を徹底比較!選び方のポイントも紹介」にて詳しくご紹介しています。ぜひ続けてご覧ください。 【契約業務が10分で完了】電子契約サービス「jinjerサイン」

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