シリーズでお送りしていますKindle作品紹介、今回セレクトしていただいたのは大野舞さん。 雑誌や広告分野のみならず、『花のベッドでひるねして』(よしもとばなな著)や『ナーダという名の少女』(角野栄子著)など書籍の装画なども手がけるイラストレーターです。 2013年には不思議な能力を持つ自身の母を綴ったコミックエッセイ『スピリチュアルかあさん』を発行した大野さん。このコミックシリーズはこれまで3冊出版されています。 中学・高校時代は通学バッグのほかに、大量の漫画を詰め込んだボストンバッグを持って通っていたという自他共に認める漫画オタクの彼女。現在は2児の母になり日々子育てに奮闘中ですが、スキマ時間でKindle読書をしているときが至福の時間だと話します。 そんな彼女に、最近ハマった漫画を5冊ご紹介いただきます! <プロフィール>大野舞(おおの・まい) 1980年3月31日神奈川県生まれ。神戸在住。イラストレーター。アラスカへの留学や世界一周など、様々な旅の経験から生まれる作品は物語性と 空想性に富み、現在は書籍や雑誌、広告などの分野を中心に幅広く活動中。2009年毎日新聞にて連載された「もしもし下北沢」(よしもとばなな著)では装幀・挿画を担当。自著にコミックエッセイ「スピリチュアルかあさん」(メディアファクトリー)がある。その他毎年テーマを変えてオリジナルのカレンダー制作を行っている。 <WEB>大野舞 – Denali’s Room<Twitter>@MaiDenali はじめまして、イラストレーターの大野舞です! 言わずと知れた作品ですが、原泰久先生の『キングダム』を一冊目にご紹介させていただきます! Kindleで読む漫画として、すごく向いているなと思って挙げてみました。とにかく巻数が多いので(笑)。 原先生は連載当初から「キングダムは100巻以内におさめたい」と書かれていて、2016年3月現在で41巻まで出ています。まだまだ半分以上の続きがある予定。紙だと、なかなか100冊を本棚に保管しておくって大変ですよね・・・。 キングダムを読み始めたきっかけは、1年ほど前に漫画好きの友達に「絶対好きだよ!」と勧められて。まだアメトーークの「キングダム芸人」が放送する前だったと思います。 戦災孤児の信(しん)は、下僕の身分でありながら、泰国の王・政(せい)とひょんなきっかけで出会い、同じ理想を目指していくという物語。国を統一して争いのない世の中にしたいという壮大な夢を持つ政と、「天下の大将軍」となりその政の夢を手伝うことに使命感を燃やす信の二人の絆を中心に描かれています。この漫画は男性ファンが多いと思うんですが、熱い想いを持った武将たちがたくさん登場してきて女性でハマる人も少なくないです。 主人公をはじめ、いろんな登場人物に絶体絶命のピンチが訪れるんですけど、絶対彼らは最後まで諦めないし、すんでのところで思いもよらぬ助けが来たりします。その助けが来るのも、本人たちが過去に助けた人たち・・・。援軍が来る場面、胸が熱くなります! のちに始皇帝になる政は、ある場面で敵に「人間とは争うものであり、この世から戦争がなくなることはない」というような台詞を言われるんですけど、「人間の本質は光だ」と断言します。戦乱の世でも人間に絶望をしていない政だからこそ、たくさんの人望を集めていくんですね~。最初敵だった相手が戦いを通じて味方になったり、心境の変化とともに顔つきが変っていくところもこの漫画の楽しめるポイント。ちなみに私のお気に入りの武将は王騎です! あとは何といっても絵の大迫力! 原先生は、『スラムダンク』を描かれた井上雄彦先生のアシスタントをされていた方ということもあって、躍動感や緻密なコマ割が継承されているんだと思います。大軍勢同士がぶつかり合う濃密な戦いの場面を描き続けることを想像すると気が遠くなります・・・。『キングダム』をまだ読んでいない方はぜひ! ★購入リンク → 『キングダム』

育児の悩みは自分だけじゃない! 「ママだって、人間」

あふれ出るこの想い、「母性」じゃなくてもいいですか!? 妊婦のセックスから、産後ママのバトルまで、タブーなし、修正なし、待ったなしの、一線を超えた出産育児コミックエッセイ登場! 話題作『母がしんどい』で実母との戦いを描いた田房永子が、今度は一児の母になって、育児マンガの常識とタブーを破る! こちらは田房永子さんのコミックエッセイで、私が第一子出産したころに読みました。この作品は、いわゆるハッピーマタニティ・ライフの話ではないです。 (ちなみに田房さんは、『ママだって、人間』の前に、娘を支配し娘を通して第二の人生を生きようとする母親に苦しむ経験を描いた『母がしんどい』というコミックエッセイも出されています。) 妊娠・出産という現場の中で、自信がなくなっているお母さんが読むとほっとするような漫画だと思います。「自分はダメな母親なんじゃないか」とかひとり悩みを抱えていた人は、「こういうことを言ってほしかったんだ!」と救われるかもしれません。 女性としてのそれまでの人生は千差万別なのに、赤ちゃんを産んだ瞬間に有無を言わせず「女性→お母さん」というひとつのカテゴリーに入れられ、世間的な「あるべき母親像」がおそいかかってくる・・・。泉のように無限に湧いてでてくる母性で、育児のあらゆる大変なことは乗り越えられるはずだ、だって「母親なんだから!」という無言の圧力。そうなれない自分とのギャップで苦しめられる人は多いと思います。私自身も第一子を生んだ直後、あまりのことにどうしていいのかもわからなくてひたすら呆然としていたのを思い出します。子どもを生んだ途端に 個人としての人格ではなくまず「○○ちゃんのお母さん」という呼ばれ方になったりとか、育児をしていると何かとひっかかったり、モヤッとすることがたくさんあって、でも社会的には口に出してはいけない感があるのでなんとなく飲み込んでしまう「???」ってたくさんあるんです。その方が「楽」だから。 でもこの漫画は声を出して笑えるような面白いエピソードもたくさん収録されている中で、タブ−にも切り込み、言いたくても言えなかった感覚がずばっと言葉にされていて、心の中で拍手を送りたい気持ちになりました。同じように拍手を送っているお母さん読者がたくさんいるはず! 妊娠・出産・育児の中で母はどんなことを思うのか。 女性だけでなく男性にもぜひ読んで欲しいです。 ★購入リンク → 『ママだって、人間』

島本和彦の自伝的漫画 「アオイホノオ」

時は1980年代初頭。漫画・アニメ界に新たなムーブメントが起き始めようとしていた熱い時代。近い将来ひとかどの漫画家になってやろうと、もくろむ一人の男がいた。男の名は、焔燃(ホノオモユル)。しかし、野望ばかりでまだ何も具体的には動いていなくて・・・。「なぜか元気の出る面白さ」と大好評! いまだかつてない、熱血芸術大学生物語! 『逆境ナイン』などを描かれている島本和彦先生の、漫画家を志していた大学時代を描いた自伝的漫画がこの『アオイホノオ』です。自意識過剰の主人公・焔(ホノオ)くんは、漫画やアニメが大好きで芸大に入学しますが、同級生が自分より評価されれば打ちのめされ、自分が面白いものが作れなければ打ちのめされ、とにかく自信過剰なのに日々打ちのめされていきます(笑)。 その同級生のなかには、のちにエヴァンゲリオンを制作する庵野秀明監督や、アニメ制作会社ガイナックスの社長になる山賀さんといった人たちが登場します。実際に島本先生の同級生だったみたいです。日本のアニメ・漫画界を大きく変えた人たちの下積み時代を描いているという点では、まるで「ときわ荘物語」のような作品。私の率直な感想は「こんな漫画、今までになかったな!」って思いました。話がとても多重的で、焔くん自身もそうだし、出てくる登場人物たちが私の好きな漫画作品をのちに創作する人たちばかりで、夢みたいなキャンパスライフに映ります。島本先生だけでなく、他の天才たちの青春時代を垣間見れるのも高ポイント! 焔くんも、実際に漫画家になるので才能がある人なんですが、天才というよりか秀才タイプ。ヒット作をひたすら分析して、「こういう作品だったらウケる」とか頭の中で構築をしていく独り言がすごい面白い(笑)。 この作中で焔くんは、庵野さんにとても嫉妬するんです。庵野さんは、インスピレーションが降ってきて鬼のような勢いで自分には思いつかない手法で作品を創っていく・・・。天才(と、負けず嫌いの焔くんは思ってないのですが)のすごさに圧倒されつつも、努力や分析を重ねて奮闘する姿を応援したくなります。 当時、連載が開始された『うる星やつら』や『タッチ』などが作中に出てくるのも斬新! まだ新人漫画家だった高橋留美子先生やあだち充先生の描き方をとことん分析する焔くんの台詞にも注目してほしいです。とにかく漫画愛がほとばしっています! ★購入リンク → 『アオイホノオ』

産婦人科で学ぶ命の勉強 「透明なゆりかご」

看護学科の高校3年生の×華(ばっか)は母親のすすめで産婦人科医院の見習い看護師として働くことになる。中絶の現場やその後処置を体験して一時は辞めそうになるが、出産の現場に立ち会い、生まれる命の力強さに感動し、仕事を続けていく決意をする。「多くの人に教えたい、読んでほしい」回を追うごとに読者からの反響が大きくなっていった感動作! この作品は、著者の×華(ばっか)さんが看護学科の高校生の時に、見習い看護師として産婦人科医院で働いていた時のルポ漫画です。私が第二子妊娠中に読みました。買ったきっかけは、漫画家の瀧波ユカリさんがTwitterでこの漫画について言及されていたのを見て。 実際に体験されたことがもとになっているので全部が生々しくてリアル、ほっこりするような可愛い絵なのですがシビアな現実が描かれています。 例えば、×華さんのお仕事の一つは、中絶されて取り出された胎児を業者に渡して廃棄してもらうことだったり。産婦人科という場所は当然ながらただ単純に妊婦さんがハッピーに子どもを産むだけの場所という訳ではありません。 妊娠を喜ぶ人、妊娠して絶望する人、 育てたくても育てられない人・・・。道を歩いていると、みんな同じように赤ちゃんを抱っこして、ベビーカーを押しているように見えるけれど、目には見えない心情がそれぞれにある。ただ、本当に辛い話もたくさんあるんですけど、×華さんの語り口が一貫してすごくニュートラルというか、どんな状態に対してもひとつもジャッジしてないんです。淡々としていて、それでいて希望を持っている。だからそこに、救われます。 元気だった妊婦さんが出産で突然亡くなる話も出てきます。命の生まれる現場では想像以上に多くの出来事が起きているんだと思うと、子どもが元気に生まれてくることって当たり前じゃない、すごい奇跡なんだと実感します。ヘビーな作品なんですが、命の尊さを改めて肝に銘じようという時に読み直したい漫画です。 ★購入リンク → 『透明なゆりかご』

オタク女子の気持ちに共感! 「トクサツガガガ」

隠れ「特撮オタク」OLのガハハ爆笑デイズ! 仲村さんは26才のOLさん。職場では女子力が高いと見られているけど、実は女死力滾る「特オタ(特撮オタク)」! オタバレが怖くて、一人ぼっちでコソコソしながら、人目につかないフィールドのカプセルトイを求めて街をさすらったり、一人カラオケで“特ソン(特撮ソング)”歌いまくったり・・・ヒーローの言葉を胸に、今日も進むよ「特オタ」道! 特撮モノの追っかけをしている26歳OL・仲村さんの“特オタ”コメディ漫画。 職場では自分が「特オタ」であることを隠して生きています。毎週録画した特撮モノを欠かさず観るだけでなく、フィギュアを集めていたり、戦隊ショーを観に行ったりとものすごい情熱を捧げているんですが、そんな自分をちょっと恥ずかしいと思っていて、他の人には秘密にしています・・・。 私も小さいころ、日曜日の朝にアニメ放送の流れで「特撮モノ」を観ていたので、改めて特撮モノの面白さも発見しました。 私は特オタではないですが、漫画・アニメオタクなので主人公の心情にすごい共感します。しかも、私の好みは少女漫画より少年・青年漫画が好きなので、なおさら仲村さんにシンパシー!(笑) 中学生の時から漫画やアニメの世界に没頭してきたし、とにかく愛するものがある、オタクという部分が主人公との共通点。 「育児の合間にちょっと自分の時間ができるとYouTubeでアニメを観ているんですよ」と、人に言うと「え、意外ですね・・・」みたいな反応を貰うことが多くて! 私のイラストの作風とけっこうギャップがあるみたいです・・・。 仲村さんはお母さんや会社の人に、特オタであることをバレるのを常に恐れているんですが、「いい歳して恥ずかしい!」と言う世間の声(?)に対して、「止められるぐらいの好きだったら、もうとっくに止めてるよ!」みたいな台詞を心の中で叫びます。私はそれを読んで「そ、その通りだよなーー! オタクでもいいじゃん!」と深くうなづきました。 最近は私の長女がアンパンマンオタク状態で(笑)、キャラグッズをとにかく欲しがるんです。気がつくと服が全身アンパンマンのキャラが入っているものになっていたり。 でも私自身がオタクなので、彼女を制止できず・・・。オタクのDNAが引き継がれているんだな~と思います(笑)。「大好きなものがあるっていいよね!」と熱中していることは親としてこれからも応援していきたいです。 ★購入リンク → 『トクサツガガガ』 記憶では、小学校高学年くらいのときに自由帳に漫画を描いたりしていたと思います。当時は『セーラームーン』が流行っていたので、なんとなく似たような漫画を描いていました。 スクリーントーンも使ってみたくて、おこづかいで買ってコマに貼っていましたが、漫画家を目指していた時期は実はないんです。神の領域というか、目指していいもんだとも思っていませんでした。 なので巡りめぐってコミックエッセイを描かせてもらえることになったのは、自分でも意外で・・・。「これだけたくさん漫画を読んできたんだから描けるかも」と思って挑戦してみたものの、おこがましかったです。ネームからコマ割から何から何まで苦戦して、改めて漫画というもののすごさを実感したというか、漫画家さんたちへのリスペクトが深まりました。 ★購入リンク → 『スピリチュアルかあさん』 --でも1巻がとても好評で、2巻、3巻と続いたんですからスゴイです! ところで、電子で漫画を買うことはすごく増えましたか? すごい増えましたね。私はスマホで読むよりKindle Paperwhiteで読む方が多いんですが、思っていたよりも読みやすくてオススメです。片手で操作ができるので、抱っこヒモに赤ちゃんを入れてユラユラしながら読んだりしてます。紙の本だと両手が必要になりますが! 子どもを抱っこをしてユラユラしている時間って、意外と長いんですよ。特に何をするでもないから、Kindleはそんな時に重宝しています。 私にとって漫画を読む時間は、育児の疲れを癒すオアシスタイム。漫画だけじゃなく小説やエッセイも読めるので、育児をしているお母さんにはこのKindleの便利さをオススメしたいです。 --電子にすると本棚の場所をとらないというのも利点ですよね そうですね~。私は中学・高校の時なんて、通学バッグと一緒に漫画をどっさり詰め込んだボストンバッグを持って通学していましたからね。Kindleは鞄の中も省スペースになるのもいいですね! --なかなかそこまで漫画を詰め込んでる人もいないと思いますが、おっしゃる通りです!(笑) 学校にたくさん漫画を持っていって、友達と激しい貸し借りをしてたんです。今は主婦なので、そこまで激しい貸し借りはしていません(笑)。子育てをしているとなかなか本屋さんに寄る時間を作れないので、そういう点でもKindleはすごく便利ですよ。 --大野さんにとって漫画は、いつもパワーを与えてくれる頼れる存在ということが今回の紹介で伝わってきました。今日はお忙しいなか、お時間いただきありがとうございました。 (取材・文/勝俣利彦) <過去のKindle紹介記事> ブックディレクター山口博之・選書!「育児・家族」がテーマのKindleマンガ5作品紹介!

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